「最後の 1 つ」を残す勇気
深夜、自作の動画エディタにあれこれ機能を足していました。
「素材を自由に追加できるようにしたい。
スライドの画像を差替え、音声の差替え、空のスライドを追加、アセット一覧。
あとは口パク用のキャラクターも置きたい」と、5 つの要望を一気に並べて、AI に「全部やりたい」と伝えました。
返ってきた答えが、いつもと違いました。
「5 個全部いま立てると粒度が大きすぎるので、Issue 化と着手の戦略を分けたい」と。
そして 1 つずつ実現可能性を調べてから、最後の 1 つ(口パクキャラクター)を「設計フェーズ要、即実装しない」とラベル付けして、横に置きました。
最初は、少し物足りなく感じました。
「全部やりたい」と言ったのに、4 つで止められた感覚。
でも、4 つを順番に作り終わった頃には、止めてくれてよかったと思っていました。
4 つだけ作って、5 つ目を残す

口パクキャラクターは、他の 4 つと性質が違う機能でした。
他の 4 つは、既存の仕組みに「もう 1 つボタンを足す」ような、既存の延長線の作業でした。
スライドに画像を差替える機能は、すでにある画像表示の仕組みに upload を追加するだけ。
音声の差替えも、すでにある音声再生の仕組みに upload を追加するだけ。
でも口パクは違いました。
ナレーションの音量に合わせて、キャラクターの口が動く。
それを動画に合成する。
画像 2 枚で済むのか 5 枚要るのか、音量で判定するのか音素で判定するのか、位置はどう調整するのか。
判断ポイントが多いんです。
そして、その判断のために調べる必要があるのは、私が普段使ってる Voicebox という TTS の API が音素タイミングを返すかどうか、私が前に作った別の VTuber アプリ(vtuber-mvp)と連携できるか、Remotion でフレーム単位で画像を切替えられるか、など。
実装前に「現状を確かめる」フェーズが必要でした。
これを 4 つ目の作業と並行でやろうとしたら、どっちつかずになる。
私の頭が、4 つの実装と口パクの設計判断を同時にやるには容量不足です。
「4 つだけ作って、5 つ目は明日に回す」のは、賢い分け方でした。
「全部やる」のは、実は怠惰の選択かもしれない

「全部やる」と言ったときの私は、選択肢を絞る面倒から逃げていました。
5 つを全部選ぶことは、選ばないことと同じだったんです。
頭の中を整理しないまま「全部」と言うと、結果として、どれも中途半端になります。
1 つを集中して仕上げる代わりに、5 つの 6 割完成品ができる。
5 つ並列の方が「進捗が多く見える」感じがしますが、それは見せかけです。
本当は、1 つずつ完成させる方が、終わった量は多くなる。
これ、暮らしの中でもそうなんですよね。
「明日やることが多すぎる」と感じる日。
やることリストに 10 項目並んでるとき、本当に終わるのは 3〜4 項目。
残りは「明日やる」と書き換えられて、明日に持ち越される。
最初から 3 項目に絞っておいて、残り 7 項目を「今日はやらない」と決める方が、結果として全体が前に進みます。
「あれもこれも」は、進まない選択。
残した 1 つは、ちゃんと考える時間に

口パクキャラクターは、明日以降に取りかかります。
設計判断 5 つを Issue に書き出して、対話で詰めるところから始めます。
実装はその後。
頭が冴えてる時間に、対話で詰める。
そうやって設計したものは、実装が始まるとスムーズに進みます。
逆に、頭が疲れてる時間に「全部やる」と言って手を動かし始めたら、たぶん途中で行き詰まって、結局やり直すことになる。
「いま判断する」と「いま判断しない」を分ける。
これも、暮らしと同じです。
重い決断を疲れている時間にしない。
買い物や家事は疲れている時間でも進められるけど、進路の選択や人間関係の判断は、頭が冴えてる時間に取っておく。
道具を作っているうちに、自分の頭の使い方も整理されていきます。
「最後の 1 つ」を残すのは、勇気がいります。
「全部やる」と言いきれない感じがする。
でも、それが残りの 4 つの品質を守ることになる。
明日以降の自分が、ちゃんとその 1 つに向き合えるように、今日は 4 つで終わります。

