「ないなら、作ってみる」が選択肢になる暮らし
ある海外の動画作成サービスがあって、ずっと気になっていました。
アニメ調の動画を、テキストを入れるだけで作れるサービスです。
「これあったら、自分の動画作りがすごく楽になるなあ」と思って、料金ページを見て、そっと閉じました。
年間で10万円を超えていたんです。

高い、しかも日本人好みじゃない
正直に書きます。
それくらいの金額を出してもいいんですが、もうひとつ引っかかったところがありました。
キャラクターの絵柄が、私の好みじゃなかったんです。
西洋風の絵で、私が作りたい動画の世界観とは違う。
日本のアニメっぽい雰囲気にしたかったのに、そのサービスではどうやってもそうならない。
「お金を払って、好みじゃないキャラを使う」のは、私の中ではちょっと違う気がしました。
でも、似たような日本語ネイティブのサービスは、探してもなかったんです。

「自分で作れないかな?」と思ってしまった
普通の人は、ここで諦めると思います。
「じゃあ動画はこのままでいいか」と。
でも私は、毎日 AI と一緒に開発をしている人なんです。
何かが作りたくなった時に、「自分でできるかも?」が選択肢に入っているんです。
最初は無謀だと思いました。
年間10万円のサービスを、個人で代替するなんて、と。
でも調べていくうちに、「あ、これは個人開発できる範囲かも」と思える要素が見えてきました。
絵を描く部分は AI 画像生成にお任せできる。
動画として組み立てる部分も、無料で使える OSS(誰でも使える公開ツール)の組み合わせで何とかなりそう。
一番難しそうな「音声に合わせて口を動かす(リップシンク)」の部分も、定番の OSS があるらしい。

下調べを始めた
ということで、いきなり作り始めず、まず下調べから始めることにしました。
技術的に何で組めるか。
法的にクリアできるか。
市場に隙間はあるか。
そういうことを、一つずつ調べていく。
これだけで結構な時間がかかります。
でも下調べの段階で、いろいろなことが見えてきて、それが面白いんです。
「あの有名なサービスは、音量だけで口の大きさを変えてる」とか、「同じことをやってる OSS が世界に1つしかない」とか、「日本市場には円建てで月額の動画サービスがほぼない」とか。
調べれば調べるほど、「あ、これは作れるかも」と思える根拠が積み上がっていく。

想定が崩れる気持ちよさ
下調べが終わって、最初の技術検証(PoC)に入りました。
一番懸念だった「日本語のリップシンクが動くか」を試したんです。
事前調査では「日本語をそのまま入れても駄目で、ローマ字に変換するテーブルが必要」と想定していました。
でも実際に動かしてみたら、そのテーブルは要らなかったんです。
日本語の音声ファイルを、何の前処理もせずに OSS に投入するだけで、ちゃんと口の形が時間軸に並んで出てきました。
1分の音声を約7秒で処理できる速度で。
想定していた「カナ変換テーブルを書く」というタスクが、まるごと不要になった瞬間でした。
事前調査では「英語推論ベースだから日本語は前処理が必要」と書いてあったんですが、よく調べてみると、そのツールには2つのモードがあって、片方は音響ベースで動くから言語をそこまで気にしないらしい、ということが分かりました。
「英語推論」という言葉に引きずられて、自分で要らない前提を増やしていただけでした。

作れるかどうかは、まだ分からない
正直に書くと、このサービスが本当に最後まで作れるかどうかは、まだ分かりません。
下調べは終わったし、技術検証も1個目はクリアしたけど、これから設計を詰めて、UI を作って、ユーザーに使ってもらって、料金体系も整えて、法的整備も終えて…と、まだ道のりは長いです。
途中で「やっぱり無理だな」と気づく可能性もあります。
でも、「作ってみる」を選択肢に入れられるだけで、暮らしの解像度が変わると感じています。
「これ高いな」と思ったときに、諦めるか、払うか、の二択じゃなくて、「自分で作るならどうなるか」を考えられる。
たとえ最終的に作らないとしても、考えるだけで「自分はこのサービスのどこに価値を感じているのか」「逆に何が要らないか」が見えてくる。
それは結果的に、自分の判断軸を整えてくれます。

AI が「作ってみる」をできる人を広げている
私が「作れるかも」と思えるのは、間違いなく AI のおかげです。
非エンジニアの私が、リップシンクの OSS を Windows で動かして、音声合成で日本語の音声を作って、結果を比較する、なんてことを1日でできるとは、数年前なら思わなかったです。
詰まったら Claude Code に解説してもらえる。
コマンドの意味も、エラーの直し方も、その場で教えてもらえる。
「分からないこと」が「調べたら分かること」になり、さらに「相談したら分かること」になった。
だから、いきなり10万円のサービスを諦めるのではなく、「自分で作るならどうなるか」を1日で下調べできるようになった。

ないものを作る、という普通
昔は「ないものは仕方ない」だったんです。
でも今は、「ないなら作ってみるか」が、普通の選択肢の一つになりました。
うまくいくか分からないし、途中でやめるかもしれない。
でも、選択肢として持てている、というだけで、毎日のちょっとした判断が変わる気がしています。
夜、子どもが寝た後に、リップシンクの検証ログを眺めていて、そんなことを考えていました。
明日は、もう1段階深い設計に入ります。

