「消えちゃう」をなくしたら、安心して遊べるようになった
ものづくりをしていると、自分が作ったものの「怖さ」に気づくことがあります。
使ってくれる人が感じる小さなストレス。
今日はそんな話です。
「新しく作りたいだけなのに、前のが消える」

私が作っているブラウザVTuberアプリでは、アバターを複数持つことができます。
普段使いの顔、配信用の顔、お遊び用の顔。
でも、新しいアバターを追加しようとすると「現在のモデルを破棄しますか?」と聞かれていました。
追加したいだけなのに、消すかどうか聞かれる。 これは怖いです。
「いいえ」を押せば消えないとわかっていても、その確認ダイアログが出るだけで一瞬身構えます。
ましてや、時間をかけて調整したアバターなら、なおさらです。
「消えない」メニューにした

今回の改善で、新しいアバターを追加する時に既存のアバターは一切影響を受けないようにしました。
メニューを開いて「新規追加」を選ぶと、1枚絵から追加するか、表情シートから追加するか、パーツを持ち込むかを選べます。
どれを選んでも、今あるアバターはそのままです。
「消えちゃうかも」という不安がなくなるだけで、気軽に新しいことを試せるようになります。
「差し替え」という第三の選択肢

もう一つ追加したのが「画像差し替え」という機能です。
アバターの設定(口の動き方、まばたきの速さ、パララックスの強さ……)はそのままに、画像だけ入れ替えられます。
衣替えみたいなものです。
性格はそのままで、見た目だけ変える。
季節のイラストに差し替えたり、気分で別の絵にしたり。
設定を最初からやり直すのは面倒ですが、画像だけなら気軽です。
小さなストレスは、気づきにくい

こういう改善は地味です。
新機能のような華やかさはありません。
でも、使う人が感じる「ちょっと怖い」「ちょっと面倒」を取り除くことは、新機能を追加するのと同じくらい大切だと思っています。
日常の暮らしでもそうです。
引き出しの取っ手が少しひっかかる、ドアの鍵がちょっと固い。
慣れてしまうと気にならなくなるけれど、直すとびっくりするほど快適になる。
安心が「遊び心」を生む

「消えない」と安心できたら、もっと自由に試せるようになります。
変な画像をアップロードしてみたり、極端な設定にしてみたり。
失敗しても大丈夫だとわかっていれば、遊び心が生まれます。
安心は、創造性の土台なのかもしれません。
「安心」の大切さ

「次の便は何時だろう」と不安に思うのと、「時刻表を見たから大丈夫」と安心しているのでは、同じ待ち時間でも気持ちがまったく違います。
確認できること、戻れること、消えないこと。
それが、人を安心させてくれます。
「削除」のある世界を減らしたい

開発者として、「削除」という操作にはいつも慎重でありたいと思っています。
一度消してしまったら取り返しがつかない。
そういう設計は、使う人に緊張を強います。
緊張している状態で使うツールは、どんなに高機能でも心地よくありません。
だからこそ、「消えない」設計を心がけたい。
新しく何かを作るときに、既存のものが脅かされない。
その安心感の上に、自由な発想が生まれるのだと思います。
過去の自分が作ったものが「残っている」と感じられることは、未来の自分に向けた励ましになります。
これからも、使う人の小さな「怖い」に気づいて、一つひとつなくしていきたいと思います。
「失敗しても大丈夫」という環境づくり

「消えちゃうかもしれない」という恐怖がなくなれば、もっと自由に、もっと楽しく使えるようになります。
安心は目に見えないけれど、すべての土台になるものです。

