つぎはぎの家を、ぜんぶ見て回った日
夕方、AIに新しいモデルが来ました。
せっかくだから何か大きいことを、と思って「リファクタしたいな」と打ちました。
コードの整理整頓のことです。
候補が並んだのを眺めているうちに、ふと別の言葉が出ました。
「一度、全体を見渡したい。
つぎはぎで作ってきたから」
一度、全体を見渡したい

Mintorというサービスを、1年かけて作ってきました。
作りながら覚えて、覚えながら作り足して。
だから自分の中では、増築を重ねた家のイメージがずっとありました。
廊下のこの先は、いつ建てた部屋だったか。
この配線は、どこにつながっているのか。
作った本人なのに、全体像は誰も知らない家です。
その日は新しい機能を足すのをやめて、AIと一緒に家じゅうを見て回ることにしました。
1,062ファイル、約14万行。
数字だけ見ると気が遠くなります。
前にアイコンの書き方が1,410箇所でバラバラだと分かって、目を背けたくなったこともありました。
今回も同じ気持ちになる覚悟をしていました。
「悪い家ではない」と言われた

ところが、点検を終えたAIの総括は、思っていたものと違いました。
「悪い家ではない。
良いやり方はもう存在していて、まだ全部の部屋に行き渡っていないだけ」
きれいに作れている部屋が、ちゃんとあったのです。
あとから建てた部屋ほど作りが良くて、古い部屋がその恩恵を受けていない。
必要なのは建て直しではなく、良いやり方を古い部屋にも広げていくことでした。
つぎはぎ、と自分を少し卑下するように呼んでいたものは、増築の歴史でもあったのだと思いました。
静かに壊れていた場所も、見つかった

点検の途中で、壊れた場所も見つかりました。
3日前の工事の影響で、コメントを編集して保存する機能が静かに壊れていました。
音もなく、誰にも気づかれずに。
エラーの画面を貼って、原因が分かって、その日のうちに直りました。
壊れていたことより、「壊れても静かだった」ことのほうが、あとから考えるとこわかったです。
家も、たぶん同じなんだと思います。
新しいものを足すのは楽しい。
増築は達成感があります。
でも、ときどき全部の部屋を見て回らないと、良いやり方は新しい部屋にだけ溜まっていくし、壊れた場所は静かなままです。
そして見て回ってみたら、欲しかったものの多くは、もう家の中にありました。
地図はできた。急がずに、慎重に

これから何週間かかけて、良いやり方を一部屋ずつ広げていく予定です。
地図はできました。
急がずに、慎重に。
見渡してよかった、と思った日でした。

