玄関のないお店に、お客さんは来ない
何十回ものセッションを重ねて、アプリの中身はどんどん充実していきました。
でも、ふと気づいたんです。このアプリには、玄関がなかったということに。
開いた瞬間に「何これ?」と思われる

私が作っているブラウザVTuberアプリは、URLを開くといきなり編集画面が表示されていました。
開発者の私にとっては見慣れた画面です。
でも初めて来た人には、白いキャンバスにボタンがいくつか並んでいるだけ。
何ができるアプリなのか、どう使えばいいのか、何もわからない。
3秒で閉じられてしまう。 そんな状態でした。
「作ること」に夢中で、「届けること」を忘れていた

機能を追加する作業は楽しいです。
新しいモードを実装したり、パラメータを増やしたり。
「できた!」という達成感があります。
でも、どんなに中身が良くても、入口がなければ誰も使ってくれません。
お店に例えるなら、看板もなく、入口もわからない状態で、裏口から入った人だけが商品を見られる。
それでお客さんが来ないと嘆いている。
作ることと、届けることは、全く別のスキルなんだと痛感しました。
ランディングページという「玄関」を作った

「1枚のイラストで、今すぐVTuberに。」
このひと言で始まるページを作りました。
何ができるアプリなのかを一目で伝え、使い方を3ステップで説明し、5つのモードを紹介する。
技術的にはシンプルな変更です。
URLを2つに分けただけ。
トップページに案内を置いて、そこから編集画面に進む。
でも、初めて来た人の体験は、まるで違うものになります。
「見せ方」も開発のうち

個人開発をしていると、つい機能開発に時間を使ってしまいます。
もう一つモードを追加しよう、もう一つパラメータを調整しよう。
でも今回気づいたのは、既存の機能をわかりやすく見せることも、新機能を作ることと同じくらい大切だということです。
玄関を作っただけで、中身は何も変わっていません。
でも、訪れた人の体験は大きく変わります。
これは暮らしの中でも同じかもしれません。
自分の良いところや頑張っていることを、相手に伝わる形で見せること。
それは自慢ではなく、ただの親切なのだと思います。
伝わらなければ、ないのと同じ。
だから、伝え方にも時間をかけていいのだと、やっと思えるようになりました。
「3秒」の壁

初めてサイトを訪れた人が、そのページに留まるか離れるかを決める時間は、3秒だと言われています。
3秒。
たったそれだけの時間で、「面白そう」か「よくわからない」かが判断される。
私のアプリは、その3秒で「よくわからない」と思われていたはずです。
いきなり編集画面が開いて、ボタンが並んでいるだけ。
説明もなければ、何ができるかもわからない。
自分がほかのサービスを使うときのことを考えたら、すぐにわかりました。
説明が何もないページを開いたら、すぐに閉じます。
みんなそうです。
だから、最初の3秒で「あ、これは私に関係あるものだ」と思ってもらう必要がありました。
キャッチコピーを考えた夜

「1枚のイラストで、今すぐVTuberに。」
このひと言を決めるまでに、何時間もかかりました。
「簡単にVTuberが始められるアプリ」「ブラウザだけでVTuber配信」「イラスト1枚で誰でもVTuber」。
いろんなパターンを書いては消して、書いては消して。
伝えたいことはシンプルなんです。
イラストを1枚用意すれば、難しい設定なしでVTuberになれる。
それだけ。
でも、それを短い言葉で伝えるのが、こんなに難しいとは思いませんでした。
「いちばん伝えたいことを一つに絞る」って、言葉にすると簡単なのに、自分がやろうとすると驚くほど苦しい。
作ることと届けることのあいだ

個人でものを作っていると、「作る」時間がほとんどを占めます。
機能を追加する。
バグを直す。
デザインを整える。
そうしている間は充実感があるし、目に見えて進んでいる実感もあります。
でも、どんなに素晴らしいものを作っても、誰にも知られなければ存在しないのと同じです。
作ることと届けることは、セットで初めて意味を持ちます。
今日の私は、ようやく「ここにありますよ」と言えるようになった。
まだ看板は仮書きだし、値段も決まっていないけれど、それだけで大きな一歩です。
「伝える」のが苦手な理由

正直に言うと、自分のことを伝えるのが苦手です。
子どものころから、「見てもらう」ことに照れがありました。
自分のものを人に見せるのが、ずっと恥ずかしかった。
大人になった今でも、その感覚は残っています。
アプリを作っても、「まだ完成じゃないから」と公開をためらう。
ブログを書いても、「こんな文章でいいのかな」と迷う。
でも、ランディングページを作ったことで、少しだけ変わったと思います。
完璧じゃなくても、「ここにあります」と言うだけでいい。
それは自慢でも押し売りでもなく、ただの案内です。
島の産直市場には、農家さんが自分で作った野菜を並べています。
大きさも形もバラバラで、スーパーの野菜ほどきれいじゃない。
でも、「うちで作りました」という手書きの札がついていると、つい手に取ってしまいます。
完璧じゃなくていい。
ただ、そこにあることを伝えるだけでいい。
そう思えたことが、今日いちばんの収穫でした。

