待ち時間がもったいない、から始まる自動化
「ちょっと待って、これ、もったいないな」
そう思ったのが今日のきっかけでした。
同じ作業を、延々と繰り返していた

YouTube用の台本を、自分の声で読み上げさせる作業をしていました。
台本を章ごとに区切って、ツールに貼り付けて、ボタンを押して、音声ができるまで待って、保存して、また次の章を貼り付けて……。
1章あたり数十秒かかります。
台本は10章、20章ある。
そのあいだ、私はただ画面を見て、音声ができるのを待っていました。
PCの前に座って、進捗バーを眺めているだけの時間。
「この時間、もったいないな」
そう思ったんです。
「自動化できないかな?」って聞いてみた

n8nとかDifyとか、そういう名前は聞いたことがあったんです。
「自動化ツール」って。
インストールだけはしてある。
でも、画面を開いても何から始めたらいいか分からなくて、そっと閉じていました。
今回は、Claudeに聞いてみました。
「この待ち時間、自動化できないかな?」って。
返ってきた答えは、想像よりずっと簡単でした。
「このツール、APIがあります。
これを叩けば自動化できますよ」
API。
エンジニアさんがよく言うやつ。
私みたいな人には関係ない世界の言葉、だと思っていました。
半信半疑で、言われた通りに試してみた

言われたURLをブラウザに打ち込みました。
見慣れない英語の画面が出てきて、ちょっと怯みました。
でも、Claudeに「ここを押して、これを貼って、このボタンを押してください」と順番に教えてもらえたので、その通りにしただけ。
そしたら、動いたんです。
自分のPCの中で動いているアプリが、私の打ち込んだ文字を読み上げ始めました。
自分の声で。
「え、すごい」
分からなくても、始められるんだ

今までの私は、「分かってから始める」派でした。
勉強してから、理解してから、準備が整ってから。
そう思って、結局何年も手をつけていないことが、いくつもあります。
でも今日、分からないまま始めて、動いたんです。
APIが何なのか、正確には今も説明できません。
でも、それを使って自分の声で音声が作れることは、今日分かりました。
理解が先じゃなくて、体験が先でもいい。
触ってみて「あ、こういうことか」って後から分かる順番も、全然ありなんだなって思いました。
待ち時間を、別の時間に変えたい

完全な自動化ができるようになったら、何が変わるか。
待ち時間がなくなる、わけじゃないんです。
音声の生成そのものは、たぶん同じだけかかる。
でも、その時間の使い方が変わります。
PCの前で進捗バーを見ている時間が、別のことをしている時間に変わる。
娘と話している時間。
音声はできている。
私は他のことをしている。
同じ1時間なのに、中身が全然違うんですよ。
小さな発明を、暮らしに足していく

大きな自動化じゃなくていいんです。
「毎日5分、繰り返していた作業」を「放置したら終わっている作業」に変える。
それを少しずつ足していけば、1日のなかに空白の時間が生まれていく。
その空白に、本当にやりたかったことが入ってくる。
今日、ひとつ発明しました。
明日はもうひとつできるかもしれません。
暮らしって、そうやって少しずつ、自分の手で作り変えていけるんだな。
そう思えた日でした。
追記:自分だけの辞書が育っていく

感動のあと、実際に準備を進めました。
台本を読ませるには、「読ませたい部分だけ」を抜き出したファイルが必要でした。
タイトル案とか、画面の説明とか、そういうメタな情報は混ぜたくない。
最初は面倒だなと思ったんです。
毎回コピペするの?
って。
でも解決策は、拍子抜けするほど簡単でした。
「Claudeに『台本と一緒に、読み上げ用のテキストも作って』ってお願いしておけばいいですよ」
そうか。
AIにお願いしておけば、毎回ついでに作ってくれるんだ。
そのときふと気づいたんです。
「Mintor(ミンター)」を、読み間違えられたら嫌だな
自分が作ったサービスの名前を、音声合成ツールが「ミントー」って読んだら、きっと悲しい。
そしたらまた解決策がありました。
「読み方辞書」を作っておくんです。
“`
Mintor → ミンター
Claude → クロード
…
“`
こういう小さなルールを、Claudeに渡しておく。
そうすれば、毎回ちゃんと「ミンター」にしてくれる。
この辞書、使いながら育てていくものなんだそうです。
新しい言葉が出てくるたびに、1行ずつ足していく。
これって、自分だけの辞書なんですよね。
他の誰のためでもない、私が作っているサービスの、私が使っているツールの、私が話す言葉の、読み方辞書。
使えば使うほど、精度が上がる。
精度が上がれば、もっとスムーズに動画が作れる。
動画がスムーズに作れれば、もっと発信できる。
自分のために、自分の道具を育てていく感じ。
昔の人も、たぶん同じことをしていたんだと思います。
使い込んだ包丁は、自分の手に馴染む。
何度も拭いたテーブルは、傷も含めて「自分の家」になっていく。
毎日使う道具に、少しずつ自分の痕跡が足されていく。
今の私が育てているのは、AIに渡す指示書という形の道具です。
物理的な傷はつかないけど、毎日少しずつ、私専用になっていく。
私のサービス名、私のツール、私の話し方。
デジタルでも、道具は「育てる」ものなんだな。
そう思った日でした。
作業はまだ途中です。
Pythonで自動化するスクリプトを書くところで、今日は終わりそう。
でも、ここまで進んだだけで十分満足です。
明日続きをやる自分のために、今日できたところまでコミットして、ちゃんと記録を残しておこうと思います。
追記:思った通りにいかない時間がいちばん楽しい

そのあと、実際にスクリプトを書き始めました。
一発で動くはずだと思っていました。
さっきブラウザで試したことを、Pythonで順番に書くだけなんだから。
動きませんでした。
「500エラー」という、サーバー側でなにかが壊れた時のメッセージが返ってきました。
原因は、私が「すぐに音声ができている」と思い込んでいたことでした。
お願いを送ったら、すぐに結果が返ってくる。
そう信じていたんです。
でも実際は「受け付けました」と返ってくるだけで、音声ができあがるのは、その少しあと。
私が取りにいった時点で、まだ用意できていなかった。
人間の世界でも、同じことがあると思います。
「お願いしたからすぐできている」と思い込んで、できていない相手を責めてしまうこと。
ちゃんと、できるまで待つ。
そのシンプルな原則を、機械に教えてもらった気がしました。
直しても、また同じエラーが出ました。
今度は「できました」という返事があったのに、ファイルの場所がまだ空っぽ。0.1秒くらいのタイミングのズレで、起きていたことでした。
これは、聞かないと絶対に気づけないやつでした。
機械の中にも「ほぼ同時だけど、ちょっとだけズレてる瞬間」があって、そこにハマるとエラーになる。
人生みたいだな、と思いました。
追記2:自分の声を選ぶという不思議な時間

動くようになったあと、今度は「声の質」が気になりました。
同じ文章を読ませても、毎回ちょっとずつ雰囲気が違うんです。
明るかったり、低かったり、速かったり。
「気に入った声を、固定したい」
やり方はありました。
数字を1つ決めて、それを指定すると、毎回同じ声が出てくる仕組み。
1,2,3,4,5… と数字を変えながら、何度も同じテキストを読ませました。
8回繰り返して、耳で聞き比べました。
そしたら、「これだ」と思える声が、1つ見つかったんです。
面白かったのは、理由は全く説明できないこと。
なんでその数字の声が一番良かったのか、論理的に理由は言えません。
他の数字よりちょっと柔らかく聞こえて、ちょっと親しみやすい感じがした、それだけ。
でも、それで十分なんですよね。
理由を言えなくても、「これがいい」って選ぶことはできる。
服を選ぶときも、食べ物を選ぶときも、人と付き合うときも、だいたいそうじゃないですか。
もともと、自分の声を学習させて作った「私の声」でした。
その中から、さらにお気に入りのバリエーションを選ぶ。
「AIが作った私の中から、私が好きな私を選ぶ」という、ちょっと変な作業。
自分のことなのに、選ぶ側に回っている感覚がありました。
道具は、触ると馴染んでいく

思い通りに動かないことが、何回もありました。
そのたびに、ちょっと直して、ちょっと試して、またちょっと直す。
その繰り返しです。
気がついたら、このツールの癖が分かってきていました。
- 「お願いしても、すぐには返事ができない子」
- 「返事したあとに、ちょっと遅れて準備ができる子」
- 「毎回ちょっとずつ機嫌が違う子」
擬人化するつもりはなかったんですが、触っていると、どうしてもそう見えてきます。
道具って、使い込むとこうやって性格が見えてきて、「どう扱えばいいか」が自然と分かってくるんですよね。
包丁も、鍋も、PCも、ツールも、たぶん同じです。
今日一日で、この小さなツールとずいぶん仲良くなれた気がします。
思った通りに動かなかった時間こそが、その仲良くなる時間だったんだと思います。
うまくいかない時間を「無駄だった」と思わないで済むこと。
これは、AI開発を始めてから身についた感覚のひとつです。
続きはまた明日。
本番の台本で、今日選んだこの声が通用するのか、試します。
ダメだったら、また数字を変えて、好きな声を探し直す。
そういう作業を、ちょっと楽しみにしている自分がいます。
追記:本番の台本を読ませてみた

翌朝、46段落の台本を食わせてみました。
結果は、**ちゃんと聞こえる。
でも完璧じゃない**。
段落ごとにトーンが違う。
明るかったり、暗かったり。
同じ「私」が「わたし」になったり「わたくし」になったりする。
「なんでこうなるんだろう」と思った。
でも、考えてみたら当たり前かもしれません。
人間だって、同じ文章を10回読んだら、毎回ちょっとずつ違うはずです。
試しに、段落ごとじゃなくて、もう少し大きなかたまり——セクション単位で読ませてみました。
統一感が出ました。
同じセクションの中では、声のトーンがつながっている。
「ああ、文脈をまとめて渡した方が、声も安定するんだ」
考えてみれば当たり前です。
短い一言だけ渡されるより、前後の文脈があった方が、読む側も雰囲気をつかみやすい。
AIもそうなのかもしれません。
完璧な声じゃなくていい。「私の声だ」と思えるくらいの再現度があればいい。
BGMを敷いて、テロップを乗せて、動画になったとき、たぶん十分に「私の声」として届く気がしています。
追記:見えないものに振り回された日

翌日、パイプラインを通してみたら、音声が途中で切れていました。
原因は「見えない文字」でした。
Googleドキュメントからテキストを取り出すとき、先頭に人間の目には見えない3バイトがくっついてくる。
「BOM」という名前の、いわば荷札のようなもの。
テキストエディタで開いても見えない。
目で読んでも気づかない。
でも、音声生成ツールはそれを「おかしなもの」として受け取っていた。
修正は、たった1単語を変えるだけでした。
utf-8 を utf-8-sig に。
それだけで、見えない文字が自動的に取り除かれる。
「1行の修正で直った」と言うと簡単に聞こえます。
でも、その1行にたどり着くまでに、何十分も「なんで切れるんだろう?」と考えていました。
問題の難しさって、解決の手間とは別のところにある。「何が起きているか分からない」時間が、いちばん長い。
追記:伝言メモで連携する仕組み

もうひとつ、仕組みを足しました。
出来上がった音声ファイルを、Googleドライブに自動でアップロードする仕組み。
やり方は、子どもの頃にやった「伝言ゲーム」みたいなものです。
音声を作るスクリプトは、完成したら「終わったよ」と書いたメモを置く。
別の仕組み(n8n)が5分おきに見回りに来て、メモがあったらファイルをアップロードして、メモを片付ける。
直接会話しなくても、メモを介して連携できる。
この「伝言メモ方式」、デジタルでも仕組みは同じなんだなと思いました。「誰かに何かを頼む」仕組みは、どの世界でも似ている。
追記:62分40秒、全部通った

最終テスト。
46段落の台本を、BOM修正済みのスクリプトで流した。
62分40秒。
全段落エラーなし。
出来上がった音声は6分4秒。
全部聴きました。自分の声でした。
最初にAPIを叩いた日から数えて、2日。
「待ち時間がもったいないな」から始まって、パイプラインが完成した。
台本をGoogleドライブに置くだけで、音声ができて、勝手にアップロードされる。
大きな発明じゃない。
でも、毎日の暮らしから、確実にひとつの「待ち時間」が消えた。
その分だけ、別のことに使える時間が生まれた。
小さな自動化を、また暮らしに足せました。
追記:「自分で動かす」と「誰かに動かしてもらう」

n8nというツールには、2つの使い方があります。
ひとつは、自分のPCで動かす方法。
「セルフホスティング」と呼ばれていて、無料です。
もうひとつは、クラウド版。
月額料金を払えば、ブラウザでログインするだけで使えます。
私は前者を選びました。
理由は単純で、音声を作るツールが自分のPCの中にあるから。
クラウドからは手が届かない。
その代わり、起動するのにコマンドを打つ必要がありました。
毎回同じ長いコマンドを打つのは面倒なので、「バッチファイル」というものを作りました。
中身はそのコマンドが書いてあるだけ。
ダブルクリックすれば起動する。
これって、暮らしの中の「ちょっとした手間」を減らす工夫と同じだなと思いました。
調味料をよく使う順に並べ替える。
よく使う書類をクリアファイルにまとめる。
毎朝やることをチェックリストにする。
やっていることの本質は変わらない。
ただ、始めるまでのハードルを1つ下げるだけ。
それだけで、「面倒だからやらない」が「まあやるか」に変わる。
小さな工夫の積み重ねが、暮らしを動かしていく。
今日もまたひとつ、そういう工夫を足せました。

