直してるつもりが、漏れに気づく時間でした
連休前の夜、私は自分の作ったサービス(Mintor)の管理画面を直していました。
最初は本当に小さなバグでした。
「いいね数」が 0 と表示されていて、実際にはいいねがついているプロダクトでも 0 のまま。
「あ、表示の小さなずれだろうな」と思って開いたら、そこから別のものが次々と見えてきました。
直したら、また別のものが見えた

直したつもりで開いたファイルが、別の問題を運んできました。
データの「いいね」を入れる場所の名前が、コードでは古い名前で書かれていて、データベース側の正しい名前と違っていました。
直しました。
直したら、今度は「閲覧数」が 0 のままでした。
これは、データベースにそもそもその名前の場所がなかったからでした。
直すつもりで開いたら、また別のものが見えました。
直したら、また別のものが見えました。
修正していたつもりが、漏れに気づく時間になっていました。
例文に、知らない誰かの作品の名前

途中で、AI に文章を書かせる機能のコードを覗いたら、奇妙なものを見つけました。
「タイトルの良い例」として、知らない誰かのプロダクト名が、ずっと埋め込まれていたんです。
私の Mintor に投稿してくれた、誰かのプロダクトの名前でした。
私が許可を取った覚えはありません。
コミット履歴を見ると、2 月のある日、当時の Claude Code が「タイトルの例」として勝手に埋め込んでいたものでした。
それが、毎回 AI を呼ぶたびに送信されていた。
誰のものかも確認しないまま。
これはまずい、と思いました。
私が頼んだのは「いい感じに動かして」だったかもしれません。
けれど、AI は「いい感じ」を実現するために、見えないところで他人のものを使っていました。
それは、私の責任です。
AI に頼んだ私が、確認するべきだったところを通り抜けさせていました。
諦めたコメントが、ずっと残っていた

直しの中で、人気順を計算する処理にこんなコメントがありました。
「このカラムは存在しないから、別のカラムで代用する」
存在しないと諦めて、別のもので代用する処理が、ずっと動いていました。
誰にも気づかれないまま。
実は、去年の秋以降、本当のカラムは追加されていました。
けれどコードはずっと「存在しない」と思い込んだまま、別のものを使い続けていました。
最初に「諦めた」人は、たぶんその時点では正しかったと思います。
本当に存在しなかったから。
けれど、状況が変わった後、誰もそのコメントを更新しなかった。
動いているように見えていたから。
サイトの入口に、門番が立っていなかった

修正がもっと深いところまで進んでいって、最後に気がつきました。
私のサイトには「門番」のような仕組み(middleware と呼びます)があります。
サイトの入口で「あなたは誰?」と判定して、特定のページは admin だけが入れるようにする役割です。
これを直そうとして、コードを変えました。
何も変わりませんでした。
判定が動いた跡が、サーバーのログにも、ブラウザに返ってくる答えにも、まったく残らないんです。
調べていったら、私が使っている枠組みの最新バージョンでは、「門番ファイルは src フォルダの中に置かないと認識されない」というルールがありました。
私の Mintor では、ずっと src の外側に置かれていました。
つまり、門番は最初から 立っていなかった んです。
src の中に移した瞬間、初めて立ちました。
そしてその時、初めて知りました。
今まで、ずっと、admin エリアも誰でも入れる状態だったかもしれないこと。
実際には、データを取る部分は別の場所で守られていたので、「データそのものを取られる」ことはなかったらしいです。
けれど、画面そのものは見えていた可能性がある。
それだけでも、私が想像していた状態とは違いました。
「動いてる」と「動いてると思ってる」

その夜、私は 10 を超えるコミットを積みました。
直したのは数行ずつ。
気づいたのは、もっとずっと前から「動いていない」と気づかれていなかった部分でした。
「動いている」と「動いていると思っている」の間には、こんなに距離があるんですね。
テストしてみるまで、両者は同じに見えます。
私はテストしないまま、ずっと「動いている」と思っていました。
表向きは何も問題が起きなかったから。
誰も入って来なかったから。
でも、入ろうと思えば入れた。
これから、どうしていこうか

直すよりも先に、漏れに気づく必要があるんだなと思いました。
そのためには、「動いている」を信じすぎないこと。
動いているように見えるものは、実は別の何かに支えられているだけかもしれない。
たぶん、暮らしでも同じことがあります。
「これは大丈夫」と思っているもののどれかは、別の何かに支えられているだけで、本当はずっと前から動いていないのかもしれない。
支えていたものが外れた瞬間に、初めて、動いていなかったことに気づく。
そうなる前に、たまには中を覗いてみたほうがいい。
動いているところに、ちゃんと動いている証拠が残っているか。
その夜の私は、Mintor の中を覗きました。
これからは、もう少し定期的に覗くようにしようと思います。

