65個の選択肢を、ちゃんと65個にする
夜中の1時を過ぎていました。
スライド自動生成ツールの選択画面を開いて、65種類の構造を上から順にスクロールしていました。
「アジェンダ」「ゴール設定」「垂直プロセス」「次のステップ」——名前はぜんぶ違うのに、プレビューがほとんど同じに見えます。
番号付きの縦リスト、番号付きの縦リスト、番号付きの縦リスト。
名前を読まないと区別できません。
でも名前を読んでも、どれを選べばいいかわかりません。
選択肢は多いほうがいい、でも

選択肢が多いこと自体は、悪いことではないと思っています。
たとえば料理のレシピアプリを想像してみてください。
「和食」「洋食」「中華」の3カテゴリだけだと物足りない。
でも「肉じゃが」「すき焼き」「牛丼」が全部同じサムネイルで表示されたら、どれがどれだかわかりません。
65種類のスライド構造も同じでした。
AIがスライドを作るとき、内容に合った構造を選べるように、たくさんの選択肢を用意しました。
でも、「料金プラン」も「SNS誘導」も「3要素並列」も全部同じ見た目のカード並びで表示されたら、65種類ある意味がありません。
1つずつ、顔を作る

「アジェンダ」には丸い番号バッジとプログレスバーを付けました。
会議のアジェンダって、進行状況がわかることが大事ですから。
「料金プラン」は中央のプランを少し大きくして、色を変えて、「おすすめ」のバッジを付けました。
料金プランのページってこういう見た目ですよね、というのを再現しています。
「Pros/Cons比較」にはカードの中を緑と赤で分けました。
「折れ線グラフ」からは棒グラフを消して、線とドットだけにしました。
「因果関係」は矢印でつながった横一列のチェーンにしました。
こういう作業を、10個分やりました。
「当たり前」を作る作業

それぞれの構造に、名前にふさわしい見た目を与える。
やっていることはシンプルです。
でもこれは「新しい機能を足す」というよりも、「当たり前を作る」作業でした。
料金プランを選んだら料金プランっぽく見える。
フローチャートを選んだらフローチャートっぽく見える。
その「当たり前」が65個分なかったから、1つずつ作りました。
地味な作業です。
でも、使う人にとっては、選択画面を開いた瞬間に「あ、これだ」と見つけられるかどうかの違いになります。
65個の選択肢が、ちゃんと65個の選択肢として機能する。
そういうツールにしたかったんです。
見た目の次は、中身

見た目を整えて満足していたら、実際に生成したスライドの中身がところどころ空っぽでした。
タイトルだけ表示されて、本文が消えている。
ペルソナ分析のスライドなのに、プロフィール情報が何もない。
棒グラフのはずなのに、ラベルが全部空白。
原因を調べてみたら、AIが送ってくるデータの項目名と、スライドを描く側が読む項目名がズレていました。
AIは「label」と書いているのに、描く側は「title」しか見ていない。
AIは「body」と書いているのに、描く側は「desc」しか見ていない。
名前が違うだけで、データはちゃんとあります。
でも読めません。
人間同士のコミュニケーションでも、こういうことはあるかもしれません。
ちゃんと伝えているつもりなのに、相手には届いていない。
同じことを言っているのに、言葉が違うだけでうまく噛み合わない。
もうひとつ気づいたのは、プリセットの色がおかしかったことです。
黒と黄色のテーマを選んだのに、スライドがピンク色になっていました。
黒には「色味」がないのに、プログラムが「色味がある」前提で計算していたことが原因でした。
当たり前を作り続ける

見た目を作っただけでは、ツールにはなりません。
見た目と中身と色が、全部揃って初めて「使える」ものになります。
子どもの学校のPTA資料を作るとき、スライドのテンプレートを開いて「なんか違う」と閉じた経験が何度かあります。
見た目はきれいだけど、自分の内容に合わない。
結局白紙から作り始めて、時間がなくなる。
自分が作っているツールで、同じ思いをさせたくないと思いました。
「料金プラン」を選んだら料金プランっぽく出てくる。
「フローチャート」を選んだらフローチャートっぽく出てくる。
AIが作ったデータがちゃんとスライドに反映される。
そういう「当たり前」を1つずつ作っていく作業は、たぶん終わりがないんだろうなと思います。
でも、使う人が「なんか違う」と思わなくて済むなら、やる価値はあります。
地味だけど、私はこういう作業が好きなのかもしれません。

